蓮名文庫
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PAPILIO

BL/ML/短編集




聖なる夜の願い事




 深々と降る雪を窓から眺める事なく、暖房で暖められた部屋の中で、緊張した色を含んだ少年の声が静かに響いた。
「朔」
「ん?」
「本当に……するの?」
 不意に呼ばれた名に、霧峪朔は真下にいる乃木光一を見た。
 見上げる彼の瞳は、不安で小さく揺れている。
 それが更に朔の気持ちを高揚させているとも知らずに。
「当たり前だ。今更、何を言ってる」
 意地悪そうに口角を上げる朔は、学校で知られている人当たりの良い印象など一欠片もない。
「それに“着る”って言ったのは、お前」
「そうだけど……」
 光一が着用しているのは、ノースリーブタイプの赤いワンピースに縁取る様に白いボアが付いた服。
 胸元には白いボンボンが付いた紐がリボン結びされ、ワンピースと同じデザインで出来た赤い三角帽を被っていた。
 つまりは、女性用のサンタクロースのコスチューム。
 笑いを取る為に持って来たそれを朔の一言で着る羽目になったのだが、何がどうなってこうなったのか、光一自身が良く解らない。
 ただ、光一の姉の愛に押し付けられたこの時期ならではの衣装を面白半分で持って来ただけなのに……。
「クリスマスにその格好をするって事は、そのつもりなんだろう?」
「は?! ちがっ! それは、朔が……その……っ」
 はっきり「ない」と言えないのは、愛とその彼氏がそのつもりで購入したのを知っているからだ。
 しかしそれは、クリスマス直前で二人が別れて不要になったもの。
 そして愛から光一へと渡った代物。
 そして何より、幼馴染みの朔と最近両想いになったばかり。
 少しくらいは期待だってするし、本当に嫌なら着るのを断る事も出来た筈だ。
「サンタは、良い子にプレゼントをくれるんだよな?」
「う……」
「俺は常に良い子だ」
「それは、皆の前だけじゃん」
 不敵に笑う朔は授業態度が真面目で成績も良く、取っ付きにくい外見とは裏腹に気さくな対応で先生は勿論、クラスメイトの信頼も厚かった。
 だけどそれは仮の姿。
 本当は冷静さを装った、俺様で意地悪な男。
 しかし今では、光一の前でしか見せない彼の一面。
 中学を上がる頃に両親が仲違いしてしまい、それと重ねる様に二人は仕事へとのめり込んで行った。
 子供を言い訳に離婚をしない両親は、広い一軒家に朔を残していつも留守がちだった。
 お互い顔を合わせない様に、家に帰るのはほんの数回。
 朔がいつも頼れるのは、隣の乃木家だけ。
 それでも光一の両親に心から甘える事は出来なかった。
 いつも何処か遠慮がちで、気持ちをさらけ出せない。
 そしてその頃から、朔は光一の前でしか本心を見せなくなった。
 光一はそれを密かに嬉しくも思うが、厄介でも在る。
「でもサンタはお前。届けるのは、俺宛だけだろう? ……それとも、他の奴へのプレゼントか?」
 朔の悪戯心が全て自分に向けられるからだ。
「ちがっ、う……けど」
 どちらを選んでも自分に待ち受けている結果は変わらないと認識し、光一はどう答えれば回避出来るのか頭を捻らせた。
「けど、何だ? 俺にあげたくないのか?」
 目尻を下げて悲哀を表す朔に、光一は戸惑った。
 両親の溝が深まる度に朔の表情が沈むのを光一はずっと隣で観ていたから、例え態とだと解っていても、自分が不利になると解っていても、その表情を観るのが辛かった。
 しかし、こんな形で朔としたい訳じゃない。
 朔に組み敷かれた状態で、光一は意を決して唇を動かした。
「これじゃあ、奪うだけじゃん」
 悩んだ末に漸く出た返答に、朔の表情が一瞬強張った。
 朔を傷付けたかもしれない、光一の中でそんな不安が駆け巡った。
「朔?」
 名前を呼んでも返答はなく、朔はゆっくりと光一の上から退いた。
 覆い被さっていた朔が退いた事で、自由になった光一は上体を起こして朔を見詰めた。
 部屋の中央に置かれた、テーブル前の背の低い二人掛けのソファーに、朔は腰を掛けると含み笑いを浮かべた。
「奪わないから、光一から俺に頂戴」
 そう言って足を組む男は、なんて偉そうなのだろう。
 しかし光一は、自分がどうしたら良いのか解らないでいた。
 まして、自分からなんて出来る訳がない。
「光一、ケーキ」
 戸惑う光一を見通して、朔はテーブルの上に在る小さなホール型のクリスマスケーキを指差した。
 真ん中にサンタクロースとトナカイを乗せたクリスマスケーキは、真っ白い生クリームと真っ赤な苺で出来ていた。
 光一はそれを四等分に分けると小皿に盛り付けて、デザート・フォークを添えて朔の前へと訪れた。
「はい、これで良い?」
 差し出しながらそう言う光一に、朔は光一の開いた足の間に組んでいた右足を差し込んで上へと持ち上げた。
 スカートを穿き慣れていない光一は、いつもの癖で足を肩幅に開いて朔の前に立っていた。
 その間に足を通されて、スカートを持ち上げられる。
「うっわぁ?!」
──カシャ……ンッ……
 ただでさえ慣れないスカートを穿いているのに、朔にそんな事をされて光一は慌ててスカートの上から左手で朔の足を押さえた。
 でなければ、朔の足先が光一の股間に触れていたからだ。
 しかし光一が咄嗟に動いた反動で、取り分けたケーキに添えたフォークが床に落ちてしまい、光一の足元に転がった。
「ふっ……はは、あっは。そんなに……慌て……なくても、あははは!」
 光一の慌て振りに、朔は嬉々として喜んだ。
「さーくぅー?」
 ケーキを持ったまま睨み付ける光一に気付くと、朔は緩んだ口元を締める。
「冗談だ、足はもう使わない」
 朔がそう言うと、光一は溜息を吐いて苦笑する。
「はい、食べて」
 再度、朔の前にケーキを差し出して、光一は早く役目を終わらせたい様子だ。
 しかし朔はわざとらしく眉根を寄せる。
「フォークがないが?」
 全く動く気配のない朔に、さすがの光一も吠える。
「だぁ! お前のせいだろうがっ!」
 勢い良く悪態を吐いて、テーブルに在るフォークを手にすると朔の目前に差し出した。
「光一」
「あんだよ?」
「食べさせろ」
「あ゛?!」
 両手をだらけさせたまま背中をソファーに預けた姿勢で、朔はさも当然とばかりの雰囲気を醸し出す。
 しかし甘えるのも意地悪をするのも、全て向けられるのは自分だけ。
 自分勝手な両親に散々振り回された朔をこれ以上傷付けたくなくて、光一も朔には甘かった。
 これがただの男友達だったら……幼馴染みのままだったなら、朔のこんな態度を許せる訳はなかった。
 気付いたのは中学三年生の時。
 周りが異性を意識する中で、光一は異性や友人よりも朔の存在だけが気になっていた。
 最初は環境や同情から目が離せないだけだと思っていた────思おうとしていた。
 しかし自分にだけ見せるそのままの朔を感じる度に、嬉しくなったり歯痒くなったりする感情が“只の友情”ではない感情(もの)だと悟った。
 だけどそれを打ち明けられないまま月日は流れ、朔と同じ高校に受かった時には死ぬ程嬉しかった。
 自分よりも遥かに頭の良い朔は、光一が手も届かない有名高校に進学するとずっと思っていたからだ。
『実家から通える高校を探しただけだ』
 そう理由を述べる朔に、光一は喜んだ。
 理由なんか何でも良くて、朔と同じ高校に通えるのが単純に嬉しい。
 それから半年が過ぎて10月31日のハロウィンの日、夕食後に朔のこの部屋でお菓子を食べながら寛いでいると、突然告白された。
 パニくる光一を無視して、朔はその唇を塞ぐ。
 それからは更に朔に甘えられるのが嬉しくて、今も拒否なんか出来ない。
「甘えん坊」
 少しくらい意地悪をされても、光一にとって自分が特別なんだと感じられた。
「光一、頂戴」
 見詰められた瞳に、光一の心拍数が上がる。
 光一は朔の隣に腰を下ろすと、フォークでケーキの先端を掬って朔へと向けた。
 近付けると口が開き、パクリとケーキを口に含む。
「お前も食べろ」
 そう言って自分用のケーキの生クリームを人差し指で掬って、光一の前に突き出した。
 光一は左足を伸ばした状態でソファーに横向きで座り、スカート姿なんて気にする事なく、股を開いて太腿までスカートが捲れていた。
 その姿勢で口許に寄せられた生クリームを舐めると、舐め取れなかった分を唇に塗られる。
 指が離れ、朔の舌が下唇をなぞった。
 反射的に薄く開いた唇に朔の舌が割り込んで、歯列をこじ開けるとすぐさま光一の舌を絡め取った。
「ふ……んっぁ」
 甘ったるい生クリームと耳に響く鼻から抜ける声。
 それが更に朔の欲情を掻き立てる。
 光一の後頭部に右手を添えて、角度を変えながら深く交わろうとした時、光一の驚いた声が隙間から漏れた。
「あっ……!」
「どうした?」
 その瞬間、違和感を感じた朔は躰を少し離して光一の服の上を見た。
 赤いワンピースがたごまった場所に、皿から滑り落ちたケーキが真っ白く服を汚していた。
 そして、落ちた反動で散らばった生クリームが光一の膝から太腿に掛けて散らばっている。
「あーあ」
「『あーあ』じゃないよっ! 朔が変な事するから……っ」
「変なって、光一が感じ過ぎなんだろう?」
 横目で見られて、光一は肩が竦んだ。
「そんなに気持ち良かった?」
 声音を変えて、光一の耳許で囁く朔は何とも楽しそうにペロリと耳朶を舐めた。
「……っ! おっま!」
 赤い顔で耳を押さえる光一は凄く動揺していて、落ちたケーキの事なんか忘れてその場から動こうとする。
「光一、動くな」
「あっ……」
 言われてまた下を見るとケーキは未だにそこに在り、光一はそっとそれを掴むと、持ったままでいた取り皿にそれを戻した。
 クリーム塗れで動けない光一の代わりに、朔が取り皿をテーブルの上に置く。
「朔、ティッシュ!」
 光一は自分の状態を眺めながらテーブルの下にあるティッシュを朔に頼むが、朔はそれを持つ事なく光一が座るソファーの前で両膝を付いた。
「朔?」
 疑問を投げ掛けるように名前を呼ぶが、返事はない。
 それどころか、クリームが付いた右手の甲を掴まれて掌を上に向かされる。
 何をするのかと見ていると、朔はそのままペロリと掌を舐めた。
「ちょっ! 朔?!」
 驚きの声を上げる光一に目もくれず、朔はそのまま光一の手に付いた生クリームを舐め取って行く。
「んっ」
 掌を這う舌の感覚に、光一はくすぐったさを感じて手を引っ込めようとするが、朔に右手を強く握られていてビクともしない。
 それどころか、指先を丁寧に舐められて、もどかしさが指先から全身へと伝わって行く。
「はっ……んん」
 指の間を舌先でなぞられて、口からは我慢出来ない甘い声が漏れた。
 全ての生クリームを舐め終えても、朔はまだ光一の手を離さない。
 何度も繰り返される舌の動きに、光一はぎゅっと瞼を閉じた。
 すると今度は、別の箇所に朔の熱を感じる。
「朔っ?」
 驚いて下を見れば、膝先に付いたクリームに舌を這わされていた。
「くす……ぐったい、んぅ……」
 ムズムズとした感覚とは別のものを感じて、光一の口からは甘い響きを持ったものも零れた。
「やっちょ、さ……くっ」
 生クリームを舐めながら徐々に上へと向かう朔に、光一は息を詰める。
 掴んだ肩に力を込めても、朔はビクともしない。
 それどころか行為は止まる気配すらなく、更にエスカレートして行く。
「は……ぁ、んっやぁ!」
 ピクリと一層躰を震わせたのは、朔の舌が脚の付け根の内側を舐めたからで、光一の性感帯を刺激した。
「んんっ!」
 必死に止めようとしても上手く力が入らず、散らばった生クリームを全て綺麗に舐め取られた。
 気付けば朔は、光一の両足を広げて足の間に埋もれていた。
「これだけで、こんなになるんだな」
「はぁ……んっ」
 急に布越しから性器を鷲掴みにされて、光一は躰を縮こませた。
「朔……やめっ……ぅんっ」
 人差し指で布越しから裏筋をなぞられて、光一はもどかしさでたまらず腰をくねらせる。
「止める訳ないだろう。……それとも、中途半端が良いならこれで結ぼうか」
 そう言って床に散らばっていた、サンタクロースのコスチュームを包んでいた赤いリボンを手にする。
 朔は素早く光一の下着を抜き取り、勃ち上がった竿の根元に固くリボン結びを施した。
「さ……く、苦し……」
「これなら良いだろう?」
 顔を歪める光一に意地悪くそう言うと、朔は光一の竿を上下に扱いた。
「ふ……んっ」
 光一は躰の中心に熱が集まるのを感じながら、結ばれた箇所の息苦しさに一層眉を顰める。
「光一が粗相をしたから、結局ケーキを一口しか食べられなかったな」
 全てを光一のせいにして、朔は楽しそうに続けた。
「光一でケーキを戴くか」
「え、な……に?」
 与えられる刺激を耐えるのに必死で光一は朔の言葉が耳に届いて居らず、躰を離した事に安堵の溜息を吐いた。
 だけど勿論、それはすぐに終わる。
 新しい取り皿にケーキを乗せて戻った朔は、ソファーから立ち上がろうとしている光一の唇に、ケーキに彩りを与えている苺を無理矢理ねじ込んだ。
「ふぁにふ……?!んんっ!」
 朔は光一の口の中に有る苺を態と潰すように口内を犯しながら、光一を上向かせるとソファーへと押し戻した。
 持ったままの取り皿を右側の手すりに乗せて、動けないように光一の太腿に座り、スカートを捲り上げて赤いリボンが結ばれたそれに右手でケーキの生クリームを掴むと、手早くそれに塗りたぐった。
「んっやっ、はぁ……んっふ……んっ!」
 朔の舌と苺で上手く喋れない光一は懸命に朔の両肩を押し退けるが、生クリームで滑る手の感覚と息苦しさが混じる快楽によって、あまり意味をなさない行動になる。
 朔は苺ごと光一を貪ると、そのまま光一の口許から垂れた苺の汁を辿って下顎から首筋、鎖骨へと舌を下降させた。
 その間中、光一の竿を真っ白く塗った朔は掌で亀甲を擦り上げると、下から上へと全体を搾り上げた。
 それを何度も繰り返され、光一の鈴口からは生クリームとは別の透明な液体がタラリと溢れた。
 それを生クリームと混ぜるように、朔の親指が鈴口とその周辺をグルグルと混ぜ回す。
 それが更にヌルヌルとした感覚を増して、光一の神経を犯す。
「やぁっ! さっ……く、もう苦し……ぁっん」
 たまらず叫ぶが、刺激が邪魔をして喘ぎへと変わる。
「光一は我慢が弱いな。そんなにもっとして欲しい?」
 光一の声など一切聞こえていないかのように、朔は光一の望みとは別の言葉を口にする。
「ち……がっ、んっん!」
 一層激しさを増して扱かれる自分に、光一の意識は途切れそうだった。
 縛られた苦しさからか、目頭にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「はや……くっ」
 解いて欲しくて発した言葉は、意味を履き違えて朔の耳に届いた。
 朔が嬉しそうに口の端を上げると、光一の上から退いて足下に跪いた。
 そしてそのまま、白く塗られた朔の昂振りを喉奥まで沈み込ませる。
「ふっ……んんっ!」
 ビクビクと痙攣してもリボンが邪魔をしてイける訳はなく、朔の頭を押さえて涙混じりに喘ぐしかなかった。
「やぁっはな……、やっぁん……あァッ」
 既に限界に到達しているのに、達せない息苦しさが光一の思考を鈍らせる。
「そんなにコレ、取って欲しい?」
 リボンに手を掛けながら光一を見る朔に、光一は懇願の表情で何度も大きく頷いた。
 しかし、それはすぐに外される事はなく。
「光一が素直に手伝ってくれたら、外してやる」
 と悪戯に笑って、リボンに掛けていた手を退かした。
「手伝ってくれる?」
 目前まで寄せられた朔を見詰めながら、光一はゆっくりと唇を動かした。
「てつ、だっ……から……はやく、さ……くぅ」
 縋る瞳に射抜かれて、朔もまた欲望が渦巻く。
「良い子だ……少し、我慢しろよ」
「うん?」
 光一の躰を下にズラして、足をソファーに乗せたまま左右に開かせた。
「足が落ちないように持ってろ」
 そう指示して、朔は一度机の引き出しから何かを取ると、光一の真下に座った。
 何をされるか解らないが、光一は反り立つ己を早く解放して欲しかった。
 思考能力が低下していて、自分でどうにか出来ると言う考えは毛頭になく、光一はこの状況を作り上げた朔に全てを委ねていた。
 足を抱えながら待つ光一の秘孔に、朔は指先に垂らした潤滑剤で解すように塗り付けながら中指を挿れた。
「ひゃっ!」
 ひんやりとしたジェルに驚いて、光一は瞳を見開く。
「すぐ、熱に馴染むから」
 朔はそれだけ言って、潤滑剤を付け足しながら何度も何度も光一の中を出入りする。
 少しの痛みと異物感を歯を食いしばりながら耐えていると、不意に指の本数が増やされて奥深くへと侵入して来た。
「んぁっ!」
 ビクリと躰を震わせて、逃げるように躰を上へとズラす。
「もう少し我慢しろ」
 熱を含んだ声色で冷たく言い放ちながら、朔は光一の中をグルグルとかき混ぜては、時折内壁を擦った。
 探るように上壁を弄くっていると、突然光一の音が変わる。
「やっん! ぁアッ……アンッ」
 大きく躰を波打たせて痙攣させるのと同じに、内壁も痙攣しながら朔の指を奥深くへと誘うようにうねっては強く締め付ける。
 朔は見付けたそこを何度も攻め続け、また赤いリボンが締められた先がヒクツクのを見ては、指をゆっくりと引き抜いた。
「あっ……!」
 物欲しそうな孔を一撫でしながら、朔は光一に問い掛けた。
「そんなにココに欲しい?」
 両足を抱えたまま朔を見詰める光一は、羞恥心よりも欲望が勝った表情で朔を咎める。
「知ってるくせにっ」
 涙目で睨むような懇願の表情に、朔の心が満たされる。
「……そうだな」
 そう北叟笑んで、朔は光一にキスを施す。
 下唇を啄んで、口が開いた瞬間に舌を潜り込ませて光一の赤い舌を絡め取っては裏側を舐め上げて、また絡め取る。
 開かされたままの口からはだらしなく唾液が垂れ、拭われる事なく光一の顎を伝って行く。
 口付けは更に深くなり、どちらともない水音が鼓膜に響く。
 光一の腕が朔の首筋に掛けられると、朔はキスをしたまま光一を横抱きにして、自分のベッドへと運んだ。
 ゆっくりとベッドに下ろし、光一の頭上に有る枕を掴むと、腰の下にそれを敷いた。
「良い子にはプレゼントをあげないとな」
 そう言いながら朔は昂振った己を取り出すと、手にしていた潤滑剤を自分の先端に塗り付けた。
 ピタリと光一の秘孔に当てると、光一の躰が萎縮する。
 朔は怖くないように、出来るだけ光一の躰に自分の躰を密着させて安心感を与える。
「光一、上向け」
 命令口調に反射的に見上げると、触れるだけのキスが唇に降りた。
「力抜いてろよ」
 そう言われても抜け切れる訳がなく、僅かに力が入る。
 それでも出来るだけ痛みがないように、ゆっくり押し広げながら内へと侵入するが、カリの部分が入っただけでも光一の顔が妖しく歪む。
「いっぁ……ん゛っ」
 宥めるように頬を撫でて、息を吐くよう指示をするとぐっと奥へと進んだ。
「うっ……あ゛ん!」
 力を抜こうと努めながら光一からは呻くような声しか出ず、先程まで反り上がっていた性器は頭を垂れた。
 朔は全てを挿れると一息吐いて、光一の内が慣れるのを待ちながら、光一のそれに手を掛ける。
 ゆっくりと性感帯を刺激しながら、先程見付けた前立腺を探って内壁を擦り上げた。
「……っ……あ、んンッ! やあ、くるし……っ」
 急速に戻ろうとする欲に、光一は首を振りながら苦痛を訴える。
 その原因は、キツく締め上げたままの赤いリボン。
 しかし朔はそれを知りながら、未だにリボンを外す気はない。
 外せばどうなるか、同じ男である自分が一番解っている。
「い……たっ、も……外し……あンっ」
 完全に立ち上がった竿の先端を擦りながら、光一の弱い所を突く。
 ぎゅうぎゅうと締め付けながら喘ぐ光一に朔も煽られて、限界がすぐそこまで来ていた。
「光一、すぐイクなよ?」
 欲を抑えた低音で、朔は光一が望んでいた事をやっと叶える。
 するり、とリボンが外されたと同時に光一の躰は戦慄き、忠告など聞いていなかったように躰を大きく震わせると全身に力を入れ、内に収まっている朔を強く締め付けた。
 それが朔の限界を刺激し、光一に続くように朔もまた達す。
「く……っ」
 自分のペースを崩された屈辱感を味わいながら、そうさせた本人の顔を覗き込むと、光一は果てるのと一緒に意識を手放していた。
「仕方がないか」
 これを招いたのもまた自分で、朔は一人溜息を吐いた。
 小さい頃からずっと好きで、でも言えずに秘めていた想いは、仲違いした両親を目の当たりにする度に淋しさの行き場は光一へと向かっていた。
 人の良い光一が自分を見放せないと知りながら、朔は全てを光一に曝した。
 誰にも取られたくない──だけど現実には無理で、せめて高校までは……と受験日まで告げずに同じ高校を受けた。
 その後から光一の態度が少し違って見えた。
「本当、素直だよな」
 後始末を終えて、掛け布団を光一に掛けて髪を撫でた。
 少し癖の有る猫っ毛の髪が、さらりと額を滑る。
 涙に濡れた顔を拭いながら、朔は小さく呟いた。

──Merry Christmas.

7


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