Bedlam
偏執的情慾症候群
BL/ML/ダークシリアス短編集
歪んだ口
「好きだよ、好きだ」
「う、あ……!」
欲に猛り狂う腰を穿つ度に薄く赤を帯びた唇が甘い嬌声を上げる。
ほんの少し前は友人だった男が今は、俺の下で苦痛と快楽の狭間に喘いでいる。革のベルトが食い込む奴の両手は抵抗の術を失くして頭上のベッドの枠に縋り、軽蔑するように俺を見ていた両眼からは涙が絶えず溢れて枕を濡らした。
「あ゛あ゛、んう!」
「大人しくしなよ。辛いのは自分だよ」
俺は未だ逃げようと悪足掻きする奴のうつ伏せになっている身体を腰を掴んで引き寄せると、後ろから奴の頭を枕へ押さえつけた。
好きなのに憎くて堪らない。ずっと好きで我慢してたのに彼女なんか作って、俺の気持ちを知らずに嬉しそうに女の事を語るこいつを見てたら憎くて、憎くて憎くて……築き上げてきた友人関係なんてどうでもよくなって、無理矢理でも俺のものにしたくなった。
「頼、む、やめ……っ」
「やめてどうなるの? 俺の事を微塵も理解していないくせに──理解する気もないくせに!」
「あ゛あ゛っ」
「お前なんか壊れてしまえばいい。俺を拒絶する心なんかいらない。俺を受け入れるしかない身体だけあればいい」
「い゛っあ゛!」
嫌がっていようと抗えない快感に咽ぶ奴のペニスを根元から握り締めてやる。苦悶に歪む表情とは裏腹に唇から漏れるのは、垂れ流しの精液の如く粘着質で艶のある声だ。
やっぱり分かってない。この現状から後戻りできるとでも思ってるの? 何も無かったことにできるわけがないだろう?
「俺を置いて、あんな女と幸せにはさせないよ」
「は、あ゛っああああ!」
俺は腰の動きを速めて奴の身体を激しく打ち付けて揺さぶり、握り締める腫れ上がったペニスを扱き急速に絶頂へと追い上げていく。
「愛をあげる。お前がずっと蔑ろにしてきた俺の愛を、今日という日に生まれた憎しみと共に時間をかけてじっくりと、この身体に染み込ませてやるよ」
熱情を注ぎ込むたびに俺の好きな彼は失われていく。
今目の前にあるのはただの肉の塊。受け止め切れない精液を肛門から無様に垂れ流して、涙は跡を残しているだけでとうに涸れていて、少しの抵抗も拒絶の声も忘れたされるがままの壊れた玩具だ。
これでいい。俺を映さなくても、他の誰のものにもならない、俺の自由にしかならない俺だけの玩具だから……。
「壊れちゃったお前なんか、俺だけでいいんだよ」
ありがとうございます!