久多良木文庫
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Lovers Tale

BL/ML/ラブコメ短編集




告白の受難




 男、中津川寛谷今日一世一代、人生初の愛の告白をする!
「好きだ、付き合ってくれ」
 告白すると勢い込んで俺がやったのは、情けないことに土下座だった。
 中学からの付き合いでずっと親友をやってきた男、広岡真臣を好きになってから片思い生活三年。告白しようかずっと悩んできたが高校に入ってからのこいつの成長とモテっぷりに我慢ならなくなった俺は、休日に遊ぶ口実で真臣を部屋へ招いた。
 俺はゲームに夢中になってる真臣に話しがあるからと向かい合わせになり、張り詰める緊張の中でやっとの思いを口にしたのだが……
「どこさ?」
 真臣から返ってきたのは間の抜けた科白だった。
 俺は即座に上半身を起こす。
「その付き合うじゃねえ──つーか好きだっつったのはシカトか!?」
「え、誰を?」
「おまっ……ひとが一世一代の告白してるってのに茶化してんじゃねえ!」
「告白? 茶化す?」
 言っておくがこいつは馬鹿じゃない。中学でもそうだったが高校に入ってからも成績は上がる一方でスポーツもできる優等生だ。今まで親友をやってきて天然をかますようなこともなかった。しかしここで、まさかここで、超ど級の天然をかますたぁ嫌がらせにもほどがある!
 マジ切れ寸前の俺に対して慌てる様子もなく真臣は、頭上にクエスチョンマークを飛ばしつつ暫し考え込む。
「あー……」
(やっと理解したか)
「練習台ね」
 安堵した矢先に真臣はにっこり笑ってボケをかましてくれた。馬鹿でも阿呆でもかっこいいと思ってしまいながらしかし、すかさず俺は突っ込みを入れる。
「お前アホの子だろ」
「ひっで!」
 誰が見ても酷いのは真臣だ。
「俺はお前に言ってんだよ!」
「あん? だから練習だべ?」
「ちげえっつの! お前を好きだっつってんの!」
 俺は意地になって大声を張り上げた。どういう解釈をすれば目の前の男が別の人間を好き好き言ってるように聞こえるのかわからんが、告白に備えて家に誰もいない日を選んでて良かった。
 いつの間にか膝立ちで迫りぜえぜえ息を継ぐ俺を、勢いに圧されて上半身を僅かに反らせる真臣はきょとんとした顔で見てくる。これで駄目なら俺だって泣く。海にでも行って「真臣のばっきゃろー!!」って叫んで好きだったことなんて忘れてやると思った。それなのに真臣は優しく俺に微笑みかける。
「俺も好きだぞ」
「がっ……!」
 俺は吃驚し過ぎて言葉にならないへんな声を出した。だってまさか、あれだけ大ボケかましまくってた奴からいきなり何の前触れもなく自分と同じ告白が聞けるなんて思いもしなかったから。
 しかし、俺はそこでふと考えた。こいつは俺をどう好きなんだろうと……。
 今までお互いに──俺は違うが──ただの親友として付き合ってきたんだ。その親友である俺からいきなり告(コク)られたからって、一瞬で親友から恋愛への好きにスイッチが切り替わるんだろうか?
 真臣の大ボケに踊らされてた俺はすっかり疑心暗鬼に陥っていた。
「俺の好きはそれじゃねえぞ」
 恐らくこいつのは親友として好きってことなんだろうと俺は言ってやるが、真臣は何故か落ち込んだように見えた。
「え? 俺のこと嫌いなん?」
「ちゃうわボケ! 好きって告(コク)ってんだろーがっ」
 これで何度目の「好き」だ馬鹿野郎! 今なら往来でも声張り上げて言えるぞ俺は!
 いい加減にしろと言わんばかりの俺に真臣は至極嬉しそうに笑った。
「じゃあ両思いだ」
「ああ、そう…………へ?」
 気が抜けた俺の隙を突いて真臣は軽くちゅっと音を立てて俺の唇を奪っていった。
「両思い、な」
 前のめりになっていた俺の身体は萎む風船の如くシューっと元の体勢に正され、呆ける俺の前にはしてやったりと北叟笑む真臣がいた。

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