天白文庫
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DOLL

BL/純愛/R指定




小噺 メイドさん再び?




 ある日の夜。
「それで? 真珠さんは客にどんなメイドっぷりを披露していたんですか?」
 いつものように睡眠をとろうとギイの部屋を訪れた。しかし、先に部屋にいたギイはいつもの恵比寿顔でいるというのに、俺に突拍子もない質問をしてくる。
 いつものギイだけど、手には鞭を持っている。しかも一本鞭。
 そしてなぜか、笑顔がとても輝いている。
 なぜ?
「真珠さん」
「なに?」
「質問をしているんですが」
 ずいっと顔を近づけられ、反射的に一歩後ずさる。そしてまたずいっと一歩近づかれ、また一歩後ずさる。その調子でいつのまにか壁際まで追いやられてしまった。
 目の前の人間が敵だったら、こんなことにはならないのに。相手がギイとなると、行動と思考がどうにも鈍ってしまう。かわそうにも、上手くいかない。
「真珠さん?」
「知りたい、の?」
「そりゃあ、もちろん。俺は真珠さんの恋人ですし」
 恋人。その言葉を強調するギイ。当たり前のことを、どうしてわざわざ口にするのだろう?
 しかし、黙っていてもこのニコニコと微笑む彼の表情は変わらない。また、やっかいなのは、自分より身長も体格も一回り大きなこの人からは逃げられないということ。
 彼が望むように、答えてあげられればいいのだろうけど。
 今まで生きてきた中で、ほとんど話したことが無い俺は、それを上手く伝えることができない。
 しばし、口元に手を添えて。ギイから目を逸らし考える。
「あ……ちょっと、待ってて」
 ギイの胸に手を当て、そこで待っているように伝えると、俺はギイの部屋を一旦退出した。ギイはといえば、別段俺を引き止めることなく、あっさりと身を引いてくれた。
 十分後。
 再び、ギイの部屋へと戻ってきた俺。
 すると、ベッドで暇を弄ぶように鞭で遊びながら待っていたギイが、真ん丸と目を見開いて、アッシュの瞳を覗かせた。そんなに驚く?
「真珠さん」
「なに?」
「そのメイド服、どうしたんですか」
「アイルオーナーに頼んで、貰ってきた……DOLLを出る前に」
 あの店のコスチュームが気に入っていたわけではない。でも、なんとなく、必要な時があるのかもしれないと思い、退職する前にオーナーに言ってもらってきたのだ。
 もちろん、ギイには内緒で。だから、今目の前にいる彼は驚いている。
 再びメイドとなった俺を見て。
 けれど、なぜかアイルは俺の姿を見て眉を顰めた。あまり、好ましくなさそうに。
「気に入ってたんですか? それ」
「そうじゃ、ない、けど……」
「じゃあ、どうして?」
 俺は口をつぐんだまま、答えなかった。
 いや、なんと答えていいのかわからなかった、というのが正しい。店を出ていく際、ギイがメイド服を欲しそうにしていたからだ、等とは。直接的すぎて、とても言いづらい。
 黙ること数分。
「で? そんな可愛い恰好をしてまで。俺の質問に答えてくれるっていうんでしょ? 真珠さん」
 トントン、と。
 靴の踵で床を鳴らし、満面の笑みを浮かべて見せるギイ。
「真珠さんは客にどんなメイドっぷりを披露していたんですか?」

───…

「あう、ん……ちゅる……ん、ぺろ……」
「クス。真珠さん」
「んちゅ……ちゅう……な、に?」
「俺の袋を舐めてる真珠さん、すげえエロい顔してる。そんなに美味いの?」
 ヘッドドレスをつけた俺の頭を、優しい手つきで撫でるギイの顔は、とても嬉しそうだった。俺はといえば先ほどギイが言った通り。ベッドに腰掛けているギイの足元に跪き、なぜか両手を一本鞭によって後ろで縛られた状態で口淫しているわけで。本物のメイドには許されないだろう、普段と同様の言葉遣いで、時折話しかけてくる彼に言葉を返す。
 店でのメイド服を着てM役をしていた頃を思い出さないわけじゃないけど、それとはやはり大きく異なっている。答えは明確。相手がギイだから。
 袋の裏側を、唾液をたっぷりと含ませた舌でゆっくりと舐めあげてみれば、余裕のない吐息が落ちてくる。それを感じ取ると、もっとしてやろうとさらに愛撫が進んだ。
 美味いと思ってしたことはないけれど、ギイのそれを咥えるのも、舐めるのも、飲み込むのも、嫌だと思ってしたことは一度もない。今まで、色んな男にこうしたことをしてきたけれど、ギイが少しでも気持ち良いと感じているのなら、それまで仕込まれてきたことも悪くないと思ってしまう。ギイは複雑な表情をしていたけれど。
「ん、ちゅ……くちゅ……ちゅる……」
 だんだんと硬度が増していき、トロトロと溢れ始めた透明の体液を舐め啜ると、俺は口をさらに大きく開いてギイのモノを咥えこんだ。
 手が使えないから本当に口だけのものになってしまうが、それはギイが望んだことなのだから受け入れよう。喉奥を使って射精させることも苦しくないから。
 頭を動かし、また彼の先が俺の喉奥に当たるよう調整する。
 でも。
「真珠さんっ」
「じゅ、ちゅるっ……? ぷあっ……はあっ……ギイ?」
 ギイが俺の頬に両手を宛がい、ゆっくりと自身のソレを引き抜いた。止めろと言わんばかりに。
 唾液と彼の体液が混じった物が、ツーと俺の口から溢れて糸を伝う。拭おうにも、両手を後ろで縛られているため、それは適わない。なんとも間抜けな姿を晒しているんだろう。
 しかし、なぜ? と。俺の頭には疑問の文字が。いつもなら、途中で拒むことなどありえないのに。
 何か、まずいことでもしたのか。それとも……。
「よく、なかった?」
 俺の行為が下手だったのだろうか。そう思うと、少しだけ不安になった。
 今夜のギイは、なぜだか機嫌が悪い。心当たりがないが、俺が彼の機嫌を損ねることをしたんだろう。本当に心当たりがないが。
 それでも、こうして身体を重ねる時。彼はいつも「愛している」と、何とも言えない笑みを見せる。それが俺は……。
 今まで……といっても、まだ一年にも満たないが。彼は俺を拒むことはなかったし、むしろしなくてもいいと言っている俺への愛撫もたくさんしてきた。俺のことを、要らないと思っているわけではないと、そう思っていた。
 けれど、こうして俺の行為を止めさせるということは。
「真珠さん!」
「え……?」
「はぁ……なんて顔、してるんですか。いや、させたのは俺だけど」
 ギイが突然、俺の顔について抗議してきた。何? 俺の顔が、何?
 わけがわからず、ギイを見ると、対して彼は降参だといわんばかりに、やれやれと首を横に振って、俺の腰に両手を回して、自身が腰掛けるベッドの横へと俺を置いた。
 そして、俺の唇に指を当てて、先ほどの糸を優しく拭う。
「よく、ない?」
「ん〜ん。すげえ気持ちいい」
「なら、どうして?」
「ムカついたから」
「は?」
 ムカ、ついた?
「胃もたれ?」
「それ、本気で聞いてる?」
 ギイが苦笑する。口調が砕けているから、そのままの意味か。
「何で?」
「気づいてないんですか?」
「だから、何を?」
「今日、俺の手下の一人に触られたでしょ?」
 手下? 触られた?
 何のことを言っているんだろう? 手下……手下……ええと……。
「覚えてないんでしょうね。そりゃあ、何気ないことでしたもんね。廊下ですれ違った時に真珠さんの顔を知らない新顔がうっかり手を出して、腰を触っただけですもんね」
「腰……って、ああ、あの時の……」
 そういえば、初めて見る顔の男が意味もなく腕を伸ばしてきたから寸でのところで叩き落したんだっけ。忘れてた。
「それが? どうし……あ」
「わかったでしょ?」
「ごめん、なさい」
「え? いや、真珠さんが謝ることじゃ……」
「その男の手……叩き落したことに怒ってる、でしょ? ごめんなさい」
「え? はあ?」
 ギイが素っ頓狂な声を上げていることにも気づかず、俺は謝罪を口にした。そうか。ギイが怒っていたのは、新顔にいきなり手刀を喰らわせたことが原因だったのか。それは確かに、怒っても仕方がない。
「加減を、してあげられなかった。思わず、その……反射で。彼の手、折るところまでは、しなかったと思う。でも……」
「真珠さん」
「本当に、ごめ……」
「なんでそう可愛いの」
「え……ん、んんう!?」
 急に謝罪を口にすることができなくなったと思ったら、ギイが俺の口を塞いでいた。自身の口で。
 そしてそのまま舌を入れられ、口腔を蹂躙される。息をつく暇もないくらいに。
「んっ、ふぁ……はぁ、ん……んんっ……」
 角度を幾度も変えられて、これでもかというくらいに口の中を犯される。ガクガクと力が抜け落ちて、そのままギイにベッドへと押し倒された。両手の自由が無いから、もちろん抵抗などできない。
「んあっ、ぎ……ギィ……んんう……」
「ん……真珠さん……」
 ギイが満足すると、ゆっくりと俺から唇だけを離した。そして、そのまま身体を抱きしめて盛大なため息をつく。
「真珠さんには、やっぱ敵わないよ」
「はあっ……はあ……ギイ?」
「これが妬くってことかあ……ああ、でも。真珠さんに手を出した奴にはたっぷりと仕置きしておきましたから」
「ん?」
「自分のボスの惚れた相手に手を出そうなんざ、百億年経とうと許しませんので。……あ、このまま拘束プレイしましょうか。せっかくメイド服を着てくれたんだし、スカートをたくし上げてもいいですか? この中って女物穿いてます?」
「え? ギ……え?」
「前の方には触れずに孔の方だけ舐めてイかせてあげますね。真珠さん、孔を舐められるの好きですもんね。時間をかけてたっぷりと舐めてあげますから遠慮なく喘いでくださいね。俺、真珠さんの喘ぎ声、すげえ好きだから」
「ギイっ……ちょっ、見なっ……!?」
「た〜くさん、啼いてくださいね」
 その後、丸二日は立てなかった。

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